2026/04/06
先日、
大阪のタワーマンションの値上がり率が、
世界第一位になったとニュースで報じられていました。
また、それ以前から、今最も話題となっている
梅北エリアの動きも、日々取り上げられています。
最上階 2LDK 25億円規模
上層階 2LDK 10億円台
低層階 1LDK 1億〜2億円
あまりにも現実離れした価格帯です。
弊社が専門としている一棟収益マンションの世界とは、
あまりにもかけ離れており、同じ不動産とはいえ、
どこか『よその国の話』のように浮いて聞こえます。
——そして、もう一つ。
拭えない違和感があります。
それは、
「価格が上がっている」という事実そのものではなく、
“その上がり方の質”に対する違和感です。
本来、不動産は、
「住む」「使う」という実体を伴う資産のはずです。
しかし今、
目の前で起きているのは、
そうした前提とは、少し異なる動きにも見えます。
どこかで、
「住むための不動産」というよりも、
持つことそのものが、一種のステイタスとなっている。
そして、
本来の不動産とは異なる形で、
金融商品化しているようにも見えます。
そこでは、
「住むため」「使うため」という前提よりも、
転売を前提とした動きや、
将来的な値上がりへの期待が先行し、
資産としての実体とは切り離された形で、
価格だけが形成されているようにも見えます。
そこには、
海外資本の流入や、
資産の逃げ場として選ばれている側面もあり、
国内の実需とは異なる力で、
価格が押し上げられているようにも見えます。
海外では、
価格と賃料の関係を見る
「Price-to-Rent Ratio」という指標が、
市場の過熱度を測る一つの目安として使われています。
これは、
「物件価格 ÷ 年間賃料」で算出されるシンプルな指標で、
いくらで買って、何年分の家賃に相当するのか、
という感覚を示すものです。
一般的には、20倍前後が一つの目安とされる中で、
梅田のタワーマンションでは、
この倍率が40倍近くに達するケースも見られます。
40倍ということは、
約40年分の家賃を先に支払っている水準です。
言い換えれば、
表面利回りにすると、約2.5%前後という計算になります。
2.5%という数字は、修繕積立金や固定資産税を引けば、
実質的には維持するだけで赤字に近くなります。
それは、
実需としての住宅というよりも、
将来的な値上がりや資産保全を前提とした、
投資資産として価格が形成されている可能性を示しています。
その構造は、
私がこれまで向き合ってきた不動産とは、
明確に異なる性質を持っていました。
値上がりへの期待を前提とした市場と、
事業として収益を積み上げていく不動産。
同じ「投資」であっても、
その前提となる構造は、まったく異なるものです。
同じ「不動産」という言葉で括られながらも、
その中身は、まったく別のものに見えたのです。
なお、今回のタワーマンションの高騰は、
いわゆるバブル期の土地価格の上昇とは、
構造が大きく異なります。
当時は、銀行の土地担保や信用創造により、
金融システム全体が土地価格を押し上げた構造でした。
都心、商業地、住宅地など、
市場全体が一斉に押し上げられていました。
これは一言で言えば、マクロ金融バブルです。
一方で現在は、
海外資本や投資マネーの流入によって、
都心部の一部不動産に資金が集中する、
いわば“局所的な上昇”という側面が強く見られます。
私が日々向き合っているのは、
一棟収益RCマンションの売買です。
タワーマンションの市場とは、
一見すると、まったく別の世界のように見えます。
だからこそ──
少し距離を置いた立場から、
その動きを見つめることができるのかもしれません。
そして今、
その“外側”から見ているからこそ、
構造的なズレが、確かに存在しています。
今回のビジネス編は、特別に全編をこの場で公開することにしました。
理由は、
本テーマが私の専門領域である
「一棟収益不動産の売買実務」を一歩離れ、
一つの社会現象として捉えるべき内容であると感じたためです。
普段、
私が一気通貫で手がけている収益物件の現場では、
極めて秘匿性の高い情報や戦略が動いています。
そのため、
昨年11月以降の記事はnoteでの有料公開という形をとってきましたが、
今回の「タワマン高騰の違和感」については、
より多くの方に投げかけてみたい問いでした。
私が日々向き合っている不動産の本質と、
今起きている現象との間にある「ズレ」。
その正体を、あえて制限をかけずに綴ってみます。
度重なるタワマン高騰のニュースのなかで──
私の中で、急に、ある記憶がふっと蘇りました。
不動産業に関わる前、
富裕層のお客様から何度か耳にした話です。
その内容が、あまりにも現実離れしていて、
「本当にそんなことがあったのだろうか」
そう感じるほど、衝撃的なものでした。
しかし、別のお客様に同じ話をすると──
「そうそう!」と、まるで当然のように共感が返ってきたのです。
それが、
「数千万円のゴルフ会員権が、紙切れになった」という話でした。
その言葉が、
なぜか今のタワーマンションの価格の動きと、
重なって見えたのです。
ゴルフ会員権が、
紙切れになった?
最初は、意味が分かりませんでした。
バブル崩壊という言葉は知っていても、
その中で何が起きていたのかまでは、
まったく想像がつかなかったからです。
当時、ゴルフ会員権は、
いわばバブルの象徴のような存在だったと言われています。
ここで一度、
その仕組みを簡単に整理してみます。
ゴルフ会員権とは、
本来はゴルフ場を利用するための権利です。
しかしバブル期には、
それは単なる利用権ではなく、
“投資対象”として扱われていました。
実際に、数百万円だった会員権が、
数千万円へ、そして場合によっては数億へと、
株のように価格を上げていったのです。
なぜそこまで上がったのか。
一つは、会員数が限られていたこと。
もう一つは、当時の接待文化です。
銀行、商社、建設会社。
多くの企業がゴルフ場を利用し、
その中で会員権は“持つこと自体に意味があるもの”として扱われていました。
しかし──
バブルが崩壊すると、状況は一変します。
土地価格の下落、融資の停止、企業の倒産。
そして接待文化の縮小。
その結果、
ゴルフ会員権を必要とする人が一気に減少しました。
ここで起きたのは、
単なる価格の下落ではありません。
“需要そのものの消失”でした。
さらに決定的だったのは、
ゴルフ会員権が実物資産ではなく、
あくまで「権利」でしかなかったことです。
マンションや土地であれば、
形として残るものがあります。
しかし、ゴルフ会員権は違います。
価値を支えていたのは、
実際の利用価値ではなく、
「さらに上がる」という期待でした。
その期待値が、
価格を押し上げていたのです。
その前提が崩れたとき、
数千万円、あるいはそれ以上で取引されていたものが、
買い手のいない状態へと変わっていきました。
いわゆる、
「紙切れになった」と言われる状態です。
実は、構造として見たとき、
ゴルフ会員権とタワマンには
いくつかの共通点が浮かび上がります。
供給が限定されていること。
ステイタスとしての意味を持つこと。
資産保全の手段として選ばれていること。
そして、将来的な価格上昇への期待が織り込まれていること。
言い換えれば、
「使う資産」というよりも、
「持つこと自体に価値がある資産」へと変化している、という点です。
特に都心タワマンは
実需より投資、 海外資金、 資産保全、 ブランド性といった要素が強く、
結果として、
金融資産としての性質を帯びた不動産へと変化しています。
この点においては、
かなりゴルフ会員権と似ています。
一方で、
両者には決定的な違いも存在します。
それは、
“実体の有無”です。
ゴルフ会員権は、
あくまで利用するための「権利」であり、
それ自体に物理的な実体はありません。
そのため、
需要が失われた瞬間に、
価値を支えるものがなくなってしまいます。
一方で、
タワーマンションは、
建物と土地という実体を持つ資産です。
住むこともでき、
賃貸として運用することもできる。
つまり、
価値が完全に失われるとは考えにくい。
ただ、いくつか気になる点も浮かび上がってきます。
まず一つは、
市場の流動性です。
現在のタワーマンションは、
価格帯が大きく上昇している一方で、
それを実際に取得できる層は極めて限定されています。
つまり、
買い手の母数がもともと小さい市場であり、
状況が変化した際には、
出口が急激に狭まる可能性を内包しています。
そのうえで、
価格の形成が「収益」ではなく、
「期待」に大きく依存している点も見逃せません。
一棟収益不動産であれば、
家賃収入や利回りといった実体から価格が導かれます。
しかしタワーマンションの場合、
資産保全、ステイタス、将来的な値上がりへの期待といった要素が強く、
収益だけでは説明しきれない価格が形成されやすい構造にあります。
また、
区分所有という形態も、特有のリスクを内包しています。
修繕費や管理費、将来的な建替えなど、
重要な意思決定を多数の所有者で行う必要があり、
合意形成の難しさは避けられません。
さらに、
タワーマンションは設備が複雑であるがゆえに、
長期的には修繕コストが非常に大きくなる傾向があります。
エレベーター、外壁、共用設備、機械式駐車場など、
維持管理にかかる負担は、
築年数の経過とともに増大していきます。
そして、
同一建物内に類似した住戸が多数存在する構造も、
売却時の競合を生みやすい要因となります。
加えて、
現在の高額帯のタワーマンション市場は、
海外資金の影響を強く受けている側面もあります。
これは裏を返せば、
その資金の動向によって、
市場の流動性が大きく左右される可能性がある、ということでもあります。
今回のタワーマンションの価格高騰に対して、
私が感じている違和感は、非常にシンプルです。
それは、
「実需から切り離された形で、金融商品化が進んでいるのではないか」
という点です。
もちろん、
当時のバブルとは構造が異なります。
しかし同時に、
必ずしも“安全な上昇”とも言い切れない側面があるように感じています。
なぜなら、そこには
実需と乖離した投資マネーの存在と、
将来的な出口に対する不確実性が含まれているからです。
バブル期のゴルフ会員権も、
本来の利用価値から離れ、投資対象として扱われていました。
そして現在の一部タワーマンションもまた、
それに近い構造を帯び始めているようにも見えます。
そして──
この構造が共通している以上、
その“崩れ方”にも、一定の類似性が生じる可能性があります。
ゴルフ会員権は、
ピークを迎えた後、流動性が低下し、
その結果として価格が急落しました。
現在のタワーマンションにおいても、
金利、海外資金の動向、相続税対策の変化など、
いずれかの前提が崩れた場合、
流動性が低下する局面が訪れる可能性は、
否定できないように感じています。
つまり、
実体から離れて形成された価格は、
いずれどこかで現実との整合性を問われることになる。
私は、そのように感じています。
そしてもう一つ。
今のこの価格帯を実際に取得できる層が、
極めて限定されているという現実を踏まえると
現在の日本において、
当時のゴルフ会員権に最も近い性質を持つ資産があるとすれば、
それは、
都心の超高級タワーマンションなのかもしれません。
その点については、これまでのビジネス編で詳しく触れていますので、
ご関心のある方はあわせてご覧いただければと思います。